エージェント・作品紹介

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―当会プロデューサーが紹介可能な作品―
著者名 柳川 菖さん(女性)
タイトル 『花簪ノ橋』―深川芸者と絵師の秘めたる絆―
ジャンル 時代小説・江戸文化小説
(400字詰め原稿用紙 約350枚)
作者プロフィール
1962年生まれ。京都府出身。大学で日本美術史を専攻後、古美術商に勤務。江戸期の浮世絵や風俗資料の研究に携わる中で、史料に残らない市井の人々の生活に魅了される。退職後、15年にわたり江戸の史跡や博物館を巡り、当時の町人文化を独自に調査。本作が初の小説作品となるが、その緻密な時代考証と繊細な人物描写は、すでに複数の文芸誌編集者から評価を得ている。
梗概書
文政年間、隅田川のほとりに栄えた深川――。そこには粋と色気を兼ね備えた芸者たちの世界があった。
主人公のおりんは、深川随一の座敷を持つ芸者。三味線の腕は一流だが、心に秘めた傷を誰にも見せない。ある日、彼女の座敷に現れたのは、売れない浮世絵師蔦屋十蔵。不器用で口下手だが、おりんの何気ない仕草を驚くほど繊細に描く。
十蔵はおりんに惹かれながらも、身分と立場の違いから想いを封じる。一方、おりんもまた、かつて武家の娘として生まれながら、家の没落により芸者に身を落とした過去を持つ。二人の間には、言葉にできない共鳴が生まれていく。
やがて十蔵は、おりんをモデルにした美人画で評判を呼び始める。だが、その絵には彼女の「本当の顔」――誰も知らない哀しみと誇りが刻まれていた。絵を見た者たちは、その深さに心を奪われる。
物語は、江戸の四季を背景に、祭り、花見、川開き、雪の夜と移ろいゆく。
深川の料亭、船宿、絵草紙屋、裏長屋――庶民の息遣いが聞こえる舞台で、二人の心は静かに近づき、やがて…。
第一章 深川の春
おりんと十蔵の出会い。隅田川の桜と芸者衆の華やかな宴。
第二章 夏の夜の秘密
川開きの夜、二人は初めて本音を語り合う。
第三章 秋風と別れの予感
十蔵の絵が評判を呼ぶ一方で、おりんに縁談話が持ち上がる。
第四章 冬の決断
大火事が深川を襲う。混乱の中で明らかになる、互いへの想い。
第五章 花簪の約束
春が巡り来る頃、二人はそれぞれの道を選ぶ。そこには切なくも美しい結末が待っていた。
読者は、江戸の風情と人間の機微が織りなす、珠玉の人間ドラマに心を奪われるだろう。
企画の意図
現代の時代小説は、剣豪や武士を主役にしたものが多い中、本作は江戸の庶民文化、とりわけ芸者や絵師といった文化の担い手に光を当てている。女性作家ならではの繊細な心理描写と、美術史研究に裏打ちされた圧倒的なリアリティが融合し、「読む浮世絵」とも言うべき世界観を実現した。
恋愛要素がありながらも、それは表層ではなく、人としての尊厳、生き方の選択、江戸という時代を生きた者たちの矜持が深く描かれている。大河ドラマや映画化も視野に入る、映像映えする作品である。
読者ターゲット
・40〜70代の時代小説ファン(特に女性読者)
・江戸文化や浮世絵に関心のある読者
・繊細な人間ドラマを求める全ての読者
・藤沢周平、宮部みゆき作品の愛読者
A文学会から一言
「時代小説は男のもの」――そんな固定観念を、この作品は静かに、しかし鮮やかに覆す。
著者は、江戸という時代を、刀ではなく花簪で語る。それは、歴史の表舞台には決して立たなかった人々――芸者、絵師、船頭、料亭の女将――の生きた証を掬い上げる、優しくも力強い試みである。
本作の白眉は、何と言ってもおりんという女性像にある。彼女は弱くもなく、強がるでもなく、ただ「生きている」。三味線を弾く指先、客をあしらう言葉の裏に秘めた孤独、そして誰にも言えない過去――。その佇まいは、浮世絵の美人画がそのまま動き出したかのような艶やかさと哀感に満ちている。
対する十蔵もまた、不器用ながら誠実な男として描かれ、二人の関係は、激しい恋というより、魂の共鳴と呼ぶにふさわしい。言葉少なに交わされる視線、絵筆に込められた想い――その一つ一つが、読者の胸を静かに揺さぶる。
そして何より素晴らしいのは、江戸の空気感である。深川の路地を歩けば、焼き鳥の匂いが漂い、隅田川の夕暮れには遠くから三味線の音が聞こえてくる。著者の筆は、まるでタイムマシンのように、読者を200年前の江戸へと誘う。
これは、恋物語であると同時に、江戸という文化が生んだ美しき人間讃歌である。
ページを閉じた後も、おりんの花簪が、心の中でそっと揺れ続けるだろう。
――これは、時代小説の新たな地平を拓く、珠玉の一作である。
ご紹介可能な有効期限
2025年12月27日
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